“変化に強い”プロダクトで、SaaSの限界を超える〜物流スタートアップHacobu、これまでの7年、これからの7年〜(前編)【CEO佐々木×CTO戸井田】

皆様、初めまして!ベトナムからフルリモート勤務しておりますコーポレートコミュニケーション担当のもりこです。
 
2022年12月20日、クラウド型物流管理ソリューション「MOVO(ムーボ)」のトラックドライバー累積利用数(*1)が、国内ドライバー数の約半数に相当する(*2)、40万人を突破しました!MOVOの急成長を支えてきたのがHacobuのエンジニアチームです。“変化に強い”プロダクト開発にこだわり抜いてきました。また重要な経営判断であり、Hacobuの転機ともなったのが2019年の大規模フルリプレイスです。技術負債を解消し、「物流情報プラットフォーム」の創造を目指すHacobu CEO佐々木太郎とCTO戸井田裕貴に、これまでの歩みと、これから描く未来について語ってもらいます!
 
(*1)累計利用ドライバー数とは、利用者が「MOVO Berth」を利用する際に登録するドライバー電話番号のID数
 

出会って1分で、「CTOはこの人だ」と思った

───では、まず二人の最初の出会いを教えてください。

戸井田(CTO):2018年の10月頃だったと思います。当時転職活動中でいろんな企業の話を聞いていたんですが、Hacobuの最初の面接で太郎さんに会った瞬間、「あ、この人に賭けてみよう」ってなりました。上から目線ですが(笑)。
 
 

───出会ったその場で、ビビビときたのですか(笑)

 
戸井田(CTO):ですです。僕は、人生に関わる重要な意思決定をする際は、ロジックだけでなく、直感をとても大切にしています。太郎さん(CEO)に初めてあった時のことは今でも鮮明に覚えていて、ドアがパッと開いて、太郎さんが会議室に入ってきて、自然と目と目があって。その瞬間に「この人は持っている」と確信しました。この会社はどんな事業をしてるのか、この人は何を成し遂げたいのか、今までどんな生き方をしてきたのか等々、話をしつつのめり込んでいったのを覚えています。
 
佐々木(CEO):1回目の面接の時、僕がやりたいプロダクトの新環境「MOVO2.0」構想をまさに考えていて、裕貴に「これできる?」って聞きました。
 
戸井田(CTO):確か「余裕です。」とドヤ顔で答えた気がする(笑)。
 
佐々木(CEO):そうそう(笑)。この人ならいけるかもしれない、と僕もすごく前のめりになったのを覚えています。
 
 
右:佐々木(CEO)、左:戸井田(CTO)
 
戸井田(CTO):太郎さんに「どんな視点で、自分が働く会社を見ているの?」って聞かれて、ストレートに「何をするかよりも誰と働くかです」って答えました。そしたら、次の面談で、取締役の2人と全エンジニア10人に会わせてもらえて。これにはホント驚きました。当時ほんと色々な企業をみてましたが、ここまで振り切った面接はなかったので。この人は本質を見抜いて全力でぶつかっていく人なんだろうなって思い、とてもポジティブなエピソードとして僕の中で残っています。ちなみにですが、その日の面接時間が3時間くらいあったのも印象的でした(笑)
 
 
 
佐々木(CEO):当時CTOになれる人を探していて、面接で裕貴に会った1分後には、「この人こそが、HacobuのCTOだ」と直感しましたね。技術スキルやチームマネジメント能力、新規事業に数多く挑戦している点も魅力的だったけど、何より、人としてのバランスがとても美しい人だなと感じました。Hacobuは「all in the same boat」をvalueとして掲げているけど、仕事は誰と働くかで、達成度も幸福度も変わる。未来のHacobuを創るメンバーには、ビジョンへの共感やスキルだけでなく、何より、豊かな人間性を持っていることが大切。そして裕貴は、シンプルに「いいやつ」。面接で出会って、僕は裕貴みたいな人をずっと求めていたことに気づきました。

SaaSの限界を超えていく

自社プロダクトで、企業課題×社会課題を解決できたら幸せ

───Hacobuが目指す、テクノロジーのビジョンを教えてください。

 
佐々木(CEO):Hacobuは、自社開発のクラウド物流管理ソリューション「MOVO(ムーボ)」を活用して、企業や自治体の物流DX支援や、物流現場の課題解決をしています。MOVOはアプリケーションであると同時に、物流情報のプラットフォームでもあります。
 
物流の本質的な課題を解決するためには、様々なステークホルダーの人たちとの連携や化学反応が重要です。その時に、大切なのがデータです。データがあることにより、事実を共有し、現実を見つめなおし、建設的な解決策を考え、新しいロジスティクスの在り方を見出すことができます。
 
僕はデータ駆動型のロジスティクスが、人手不足や長時間残業といった物流の社会課題を解決できると本気で信じている。2030年までに物流情報プラットフォームを創って、サプライチェーン全体の物流最適化を目指しています。
 
 
物流情報プラットフォーム構想のイメージ
 
佐々木(CEO):このビジョンの実現には、テクノロジーが欠かせない。テクノロジーを活用して、より一層データを活用できるようにしたい。例えば、1クリックで全てのデータが分析されて、共同配送や積載率の向上、サプライチェーン全体のCO2排出量の可視化が実現される。そんな世界を描いています。
 
裕貴とよく話しているのは、「SaaSの限界を超える」ということ。これに挑戦していきたい。SaaSって基本はカスタマイズができなくて、我々の仕様に合わせてねという世界だけど、ユーザーにとっては不便な面もあります。その限界を打ち破ることができれば、新しい価値を生み出せると思っています。
 
例えばセールスフォースは既に、SaaSの限界を超えている部分があります。彼らは独自の開発言語を提供していて、セールスフォース上で稼働するアプリケーションをユーザーが開発できます。ロジスティクスの領域でもこうした世界を作っていくために、SaaSの限界を超えたビジネスモデルにチャレンジしていきたい。
 
 
 

───SaaS」のビジネスモデルと個社ソリューションを両輪で実現するということでしょうか。

 
佐々木(CEO):僕たちは、物流DXを推進するアプリケーションMOVOで、現場の課題解決を進めています。これはSaaSとして展開していきますが、さらにお客様が抱える個々の課題を解決するには、次の一手が必要になる。
 
MOVOはワンプラットフォームではあるんだけど、個社の課題に向き合うことも諦めたくない。SaaSの限界を超えて、個社ソリューションにも同時に挑むことで、課題解決の幅に広がりと深さが生まれていくと思っています。裕貴には、その可能性について技術的に探求してほしい。
 

───SaaSの限界を超えるプロダクト構想を進めていくのですね。

 
戸井田(CTO):僕はプロダクトを作るのが大好きです。そのプロダクトを通して、社会や企業が抱える課題を解決できるなら、この上なくハッピーです。一方で、課題の解像度を上げていくと、どうしても各社が求めていることの違いも見えてくる。個社ごとに異なる課題もあり、そこも解決していきたいと思っています。
 
その時に重要なことは、お客様の共通課題を解決するSaaS本体の変更容易性とスケーラビリティは絶対に失わないようにする、ということです。プロダクトは運用が命です。適切に運用され、お客様の業務課題を解決し続けることが存在意義だと思っています。変更容易性やスケーラビリティが失われ、泣く泣くクローズされていったプロダクトをごまんと見てきました。必死に開発してきたチームも一緒に解体されることが大半です。それは絶対に避けなければなりません。
 
そのためにも要件が、共通課題なのか、個社課題なのか、その両方が複雑に絡み合っているのか、ここを見極め、解きほぐし、共通課題も個社課題も解決する。それがSaaSの限界を超えることだと思っています。
 
 
図:SaaSの限界を超える「MOVOのプロダクト構想」

“変化に強い”プロダクトを生み出すエンジニア集団

鍵は、業務解像度の高さ

───Hacobuテクノロジーの強みを教えてください。

 
戸井田(CTO):ズバリ、MOVOが変化に強いプロダクトであるということと、それを生み出すエンジニアがいるということです。これは他社が簡単には真似できないという意味で強みだと思います。お客様のニーズやマーケットが変化しても、即応できるプロダクトを作れている自負があります。フルリプレイスも終わり、変更容易性やスケーラビリティは担保されています。品質が良く、本番環境の障害も少ないです。
 
共通課題と個社課題の判断が甘く、個社課題を取り込んでいってしまうと真逆の事象が起こります。一生懸命開発すればするほど、特定のお客様の課題のみ解決するプロダクトになる。その上に個社の課題を解決するための機能を積みます。複雑化するソースコード、テストの工数は肥大化していくが、喜ぶお客様はそこまで増えない。変化への耐性が落ち、どんどん技術負債が貯まっていき、何のためのプロダクトか分からなくなってくる。当事者意識が下がり、社内受託化し、ほぼ受諾開発なのではという状態となる。そうなると、最終的にビジネスモデルにまで影響が及んでしまう。実は、世の中にはこういう会社が多い気もするし、本当に気をつけないといけないと思っています。
 
問題の本質は、業務解像度だと考えています。エンジニアが物流の業務を深く理解し、お客様の業務をイメージできるかが鍵です。
 

───なぜ、Hacobuのエンジニアは変化に強いプロダクトを作れるのでしょうか。

 
戸井田(CTO):大きく二つあります。
一つめは、カルチャーです。個社要件をSaaSに取り込むとスケールしなくなるという意識をエンジニアチームだけでなく、全社で持てています。これは中々難しいことで、当然ビジネスチームはお客様の要望を是が非でも叶えたいとおもうので、開発要望としてあげるわけですが、エンジニアチームが個社要望ということで見送る事もある。お互いモヤモヤがたまることもあると思います。難しいバランス感覚を求められます。ただ、同時にHacobuにおいて絶対に妥協してはならないバランス感覚だと思っています。
 
二つめは、開発する上での環境です。まずはモダンな技術スタックです。新しい技術を常に取り入れて行くことで、開発効率が向上し続けています。次にあげられるのが、業務解像度です。プロダクトの境界を越えて物流業務をモデリングしており、エンジニア自身が要件に対してスケールする意思決定を行えています。
 
例えば、お客様から上がってきた技術要件や希望に対して、「これをそのまま開発しちゃったら、スケールしない」という感覚を持っているかどうか。この感覚って、プロダクトと業務を両方把握していないと持てません。お客様からある要件をもらったとき、「将来ここで行き詰まりますよ」「これはカスタマイズになっちゃいますよ」と判断できることが大切です。こういう意思決定の積み重ねで、変化に強いシステムが完成します。
 
そして大前提として、Hacobuのエンジニアはみんな課題解決が大好きなんですよね。「運ぶを最適化する」というミッションに向かって、みんな前のめり。CTOとして、課題解決に熱中できるカルチャーと環境をどうやって作っていくかを常に考えています。
 
図:物流業務のモデリング図(
プロダクトの境界を越えて物流業務をモデリングしており、
 
戸井田(CTO):また、太郎さんが技術好きなのもHacobuの強みだと思っています。
 
佐々木(CEO):技術、大好きです。エンジニア面接とかで、新しいことを教えてくれる人と出会うと、すごく楽しい。「そんなこと、できるんだ!」と常にアハ体験している(笑)。できないだろうと思っていたことが、技術を知っているとできることってたくさんある。僕はエンジニアじゃないけど、どんな技術があれば解決できるのか、という理解の幅は常に広げておきたい。
 
太郎さん(CEO)はワクワクする時によくこんな顔をしている(下記より出典)
 
戸井田(CTO):それで言うと、太郎さんの推しエピソードがあるので、紹介させてください。
2019年の大規模フルリプレイスの時に、すべてのソースコードを「Go言語」(*3)に切り替えたんですよ。その時、太郎さん自分でGo言語を勉強して、書いてたんですよね。みんなに質問しまくってました。具体的には、GormというORマッパーを使ってDBアクセスまで試みていて(笑)。やっぱり本質的な事に目を向ける人なんだなと思いました。
佐々木(CEO):みんながGoGo言っていて、「Goってなんやねん!」「静的型付け言語ってなんやねん!」ってなったんですよね(笑)。フルリプレイスは膨大なリソースを投入するので、疑問点は全て潰しておきたかった。だから自分でGo言語も勉強してみたり、全てにおいて納得感を持って、プロジェクトを前に進めていくことが重要だと思いました。久しぶりに勉強してコード書いてめちゃくちゃ楽しかったです。(笑)
(*3)Go言語とは:プログラミング言語の1つで、Googleによって設計実装された。